外国人雇用における外国人支援を先進的に取り組む企業3社の事例

はじめに

日本の少子高齢化により多くの業界で日本人だけでは労働力を補うことが難しくなっており、既に多くの企業にて外国人の労働力が必要不可欠となっています。
そのような状況の中、外国人を長く雇用したいと考える企業は、外国人従業員のためにさまざまな支援を始めています。
今回は、先進的に取り組む企業3社の取り組み事例を紹介します。

 

1.セブン&アイ・ホールディングが発表した外国人従業員に対する支援の取り組み

セブン&アイ・ホールディングはセブンイレブンで働く約3万7千人の外国人従業員に対しての支援を開始することを発表しました。

支援の内容には、勤務実績を証明するデータベースの新設やプログラミングなどの「外国人が就職の際に役立つスキルを身につける機会の提供」が含まれており、最大の目的は外国人従業員が長く日本で働くことができる環境を整備することです。
セブン&アイ・ホールディングは具体的に下記のような内容の支援を発表しております。

    ①商品発注など業務の研修や他店舗への転籍
    データベースに引越しの際の転居先や連絡先を登録した外国人従業員に対して転居先近辺のセブンイレブンの求人情報の紹介をしたり、外国人従業員専用の研修を開催して商品発注などの技術を学べる環境を整える。

     

    ②就業実績をデータベース化し、銀行や不動産業者と契約する際の信用補完に利用
    セブンイレブンでの就労実績や国籍、在籍していた学校名などのデータベースを作り、クレジットカードの作成や賃貸住宅の契約など、外国人にとっては難易度の高い契約手続きの際に、不動産業者や金融機関などと情報共有をすることで、外国人の信用を担保し、これらの手続きの難易度を下げることができます。

     

    ➂専門学校などと連携して簿記、語学、プログラミング学習などの講座を紹介
    大手の専門学校などと提携して、簿記、語学、プログラミングなど外国人従業員の就職の際に役立つスキルを身につける機会の提供をします。

     

    ④企業の会社説明会やインターンシップの情報提供
    独自講座やインターンシップの仲介、会社説明会の情報提供などを実施する。

セブン&アイ・ホールディングが外国人従業員への支援を開始した背景

セブン&アイ・ホールディングが運営するセブンイレブンでは留学生を中心とした約3万7千人の外国人従業員が働いており、これは4年前と比べて70パーセントの増加で外国人従業員は無くてはならない存在となっています。働く外国人の国籍も多岐にわたり、ベトナム、ネパール、中国からの留学生が中心です。

 

コンビニ上位4社のデータでは、従業員全体に対する外国人比率は7パーセントとなっていることからもいかに外国人従業員に依存しているかが分かります。

また、日本では少子高齢化の影響により今後、人手不足が加速していく見込みで、特に人材確保に苦慮しているコンビニでは、既に重要な担い手となっている外国人は無くてはならない存在であり、外国人の定着率増加を促進するために発表された今回のような支援は、セブン&アイ・ホールディングスの試みに留まらず、外国人の雇用をしている多くの企業にも広がっていくと考えられます。


セブン&アイ、外国人店員のキャリア支援

 

2.内なるグローバル化を目指す本多機工株式会社の取り組み

本多機工株式会社では社長自らが積極的に企業戦略として海外進出が必要であることを発信し、外国人の必要性を醸成し会社の内部からグローバル化の進展に着手してきました。
具体的な取り組みとしては、外国人従業員が講師となり英語教室を開催したり、外国人従業員の母国での独立を積極的にサポートしています。

    ●外国人従業員が教える英語教室を始めた影響
    英語教室を通して、日本人社員の英語能力が向上したのはもちろんのこと、外国人従業員と日本人社員との相互理解が深まりました。

    日本人社員の中には英語学習をきっかけに海外事業への挑戦を志す社員も現れ外国人従業員だけでなく日本人社員にも良い影響が出ています。
    多くの社員に英語教室へ参加してもらうため、講師と参加者には残業代の支給をしています。

     

    ●外国人従業員の母国での独立支援を通して信頼できる現地パートナーを育成
    企業にとってデメリットと思われる外国人従業員の独立ですが、本多機工では積極的にサポートしています。
    日ごろから適切な雇用管理下にて外国人従業員とうまく協働して、良い関係を築いた結果として、外国人従業員が独立をした後も会社の技術力や考え方を熟知した信頼できるパートナーとして関係を続けています。
    実際にこれまで1名のチュニジア人と2名の中国人が独立を実現させており、現地パートナーとして関係を継続させています。


外国人の活用好事例集

 

3.ダイバーシティ推進のために外国人を採用しているカシオ計算機株式会社の取り組み

カシオ計算機株式会社では、職種別採用を採用しており、担当業務を特定しています。
担当業務の特定により、特定分野にて高い専門性を持っている外国人の確保がしやすくなり、さらにキャリアアップ志向の強い外国人にとっては経験を積むのに最適な環境となるため募集する際の大きなPRポイントとなります。

    ●母国帰国休暇を制度として創設し、入社3年を経過した外国人従業員限定で特別休暇として外国人従業員のみに付与する仕組みとしました。
    この仕組みを創設した理由は当初、外国人従業員が母国へ帰国するための長期休暇を取得するケースが少なかったため、その促進のため創設しました。

     

    ●イスラム教の社員のために、お祈りの部屋を設置したり、社員食堂ではイスラム教徒が口にすることができない豚肉が料理に入っているかが分かるような工夫をしています。

     

    ●外国人従業員の日本語能力向上のために、ビジネス日本語能力テストの受験料を会社が補助し、テストの受験を促しています。
    テストの受験・合格を志す外国人従業員が増えれば、外国人従業員の日本語能力も向上し、日本人社員や顧客とのコミュニケーションの円滑化も計ることができます。


外国人の活用好事例集

 

4.在留資格「特定技能」でも義務化されている外国人への支援とは?

2019年4月より施行された新しい在留資格である特定技能は日本の人手不足解消のために設立された在留資格で、「一定の日本語能力」と「特定技能外国人を受け入れることができると定められている14分野それぞれで実施されている特定技能になるための試験」に合格をすれば特定技能の在留資格を取得することができます。

 

しかし、現在では新型コロナウイルスの影響もあり、試験の実施自体が少なく、外国人の新規入国も制限されているため、国内外での試験に合格して特定技能として日本で就労している外国人は全体でみると少数派です。

また、過去に日本での技能実習を経験した外国人に関しては、無条件で特定技能になることができるため、現在、この在留資格を取得しているのは元技能実習生が多いのが現状です。

特定技能として日本で就労する場合は技能実習生時よりも、自立していることが求められており、その分、生活する上で必須となる日本語能力を身につけていることは必須となります。

 

その一方で、技能実習生から特定技能となった外国人には日本語能力の試験なども求められていないため、日本語のレベルが低い人材も少なくありません。

日本語能力の低い外国人に対しては特に特定技能となった後にも継続的に日本語教育をしていく必要があります。

 

また、特定技能制度では法律により、受け入れ企業または登録支援機関が外国人に対してさまざまな支援を実施することを義務としており、義務となっている支援の中には「日本語学習の機会の提供」や「日本人との交流促進」も含まれており、それらが義務的支援となっている理由は今後の外国人の長期的な日本での滞在を想定しているのが大きな理由の一つだと言えます。

 

特定技能制度では特定技能1号と特定技能2号があり、特定技能1号では最長で5年間の就労が可能で、一部の分野では特定技能2号へと進むことができ、特定技能2号となれば家族の帯同や無期限の在留資格更新もできるため、こちらの制度を使って長期的に日本で就労をする特定技能外国人も増えていくと予想できます。

 

5.特定技能外国人を受け入れる際に必須の業務の一部「日本語学習の機会の提供」と「日本人との交流促進」についての詳しい内容とは?

特定技能1号の外国人を受け入れする際には、さまざまな申請書類を提出する必要がありますが、そのなかでも「1号特定技能外国人支援計画書」という書面の中で特定技能外国人に対して実施しなければならない支援内容が項目ごとに記載されており、その実施時期などを記載して提出する必要があります。

 

支援業務としては入国の際の空港での出迎えや送迎、特定技能外国人が住む住居の確保、市役所での各種手続きの補助などがありますが、その中でも「日本語学習の機会の提供」と「日本人との交流促進」について支援計画書のなかで求められている内容をピックアップして紹介します。

日本語学習の機会の提供

    ①日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて同行して入学の手続の補助を行う
    こちらは主に地域で開催されている日本語教室を紹介したり、入学までの手続きを補助することなどが想定されます。

     

    ②自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報の提供し、必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行う

    近くに日本語教育を受ける機会が無い場合やある場合でも金額の問題により日本語教育を受けるのが困難な場合もあります。そのような場合でも多くの日本語を勉強するためのオンライン講座があるため、その情報を提供して、その利用契約手続きの補助をすることが想定されます。

     

    ③1号特定技能外国人との合意の下、日本語講師と契約して1号特定技能外国人に日本語の講習の機会を提供する
    こちらに関して、特定技能外国人が望む場合は日本語講師と契約をさせ、日本語の講習の機会提供を行うこととなっています。

    費用面などを考えるとこちらの支援を実施する可能性は低いですが、オンラインでのワンツーマン日本語講座などを利用する可能性が想定されます。

日本人との交流促進

    ①必要に応じ、地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会等の案内を行い、各行事等への参加の手続の補助を行うほか、必要に応じて同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行うこと
    ゴミ拾いなどのボランティア活動への参加を促すことやその他の行事でも特定技能外国人が希望する場合に参加手続きの補助を行うことなどが想定されます。

     

    ②日本の文化を理解するために必要な情報として、就労又は生活する地域の行事に関する案内を行うほか、必要に応じて同行し現地で説明するなどの補助を行うこと
    地域で行っている盆踊りなどの行事についての情報について案内をして、必要な場合は一緒に行事に参加することなどが想定されます。

まとめ

今回は、外国人を既に受け入れている企業が自社の外国人従業員のために実施している施策や、特定技能制度での外国人に対して実施すべき支援について、3社の取り組み事例を中心に紹介しました。

 

セブン&アイ・ホールディングスの事例でも紹介したように既に外国人なしでは事業が成り立たないような会社では、外国人への支援について考える必要があります。日本語教育の支援など外国人のキャリアアップ支援が重要になってきます。

 

また、事例を紹介した本多機工株式会社やカシオ計算機株式会社のように、既に外国人を受け入れている企業では外国人のモチベーションアップや外国人がさらに会社内にて能力を発揮できるようにするための施策を考えており、一見、費用や手間がかかると思われるようなことでも結果的には会社の利益となることも分かっています。

 

特定技能制度についても、今回ピックアップした「日本語学習の機会の提供」と「日本人との交流促進」について、今後ますます重要度が増してくる支援業務になります。これらの支援は特定技能制度では法律により実施が必須となっておりますが、その他の在留資格の外国人を雇用する場合でも、実施することを強く推奨します。

 

今後外国人の受け入れを検討している企業様、または既に外国人を受け入れている企業様については、この機会に一度、外国人への支援について検討してみることをおすすめします。

 

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