人材確保戦略としての「特定技能」活用法(3)―宿泊―

人材確保戦略としての「特定技能」活用法(3)―宿泊―

人材確保戦略としての「特定技能」活用法(3)―宿泊―

第3回目の今回は宿泊分野についてです。

 

観光庁は、近年の訪日外国人旅行者の増加を前提に、東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年には4,000万人、さらにその10年後の2030年には6,000万人の外国人旅行者の訪日を目標として掲げています。
これら旅行者の宿泊需要に対応するため、全国的に宿泊分野の人材確保が必要不可欠として、以下のような試算を行っています。

■現状並びに今後の見通し
 現時点で既に約3万人の人手不足が生じているものと推計される。
 さらに、今後の訪日外国人旅行者の増加等に伴い、2024年までに全国で10万人程度の人手不足
 が生じる見込みである。
 
■ 対応策としての外国人受入れ見込み数
 「特定技能」宿泊分野の外国人労働者を今後5年間で最大2万2,000人の受入れを見込む。

宿泊分野には、前回の記事でご紹介した外食分野と同様に技能実習制度からの転換はありませんから、不足すると試算する10万人の人手のおよそ2割、2万2,000人という数字を新たに「特定技能」宿泊分野の外国人労働者でまかなうことになります。
技能試験については、宿泊分野も出足が早く、既に国内試験が実施されており、直近の試験結果はこのようになっています。
 
10/6に行われた2回目の技能試験の結果
受験者数 651名
合格者数 363名
合 格 率 55.8%

 

1回目の試験と合わせて合格者は643名です。試験自体の合格率は1回目71.6%、2回目も55.8%と高い合格率となっています。
又、10/27にはミャンマーでも試験が実施されています。
 
一方で、これまで「特定技能」宿泊分野での在留資格が認定され、実際に就業していると推測されるのは、10月までの実績では、およそ10名程度にとどまっているとみられます。
 
技能試験では、宿泊業で必要とされる技能や知識である「フロント業務」「広報・企画業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つのカテゴリーより出題され、日本の旅館・ホテルでの業務に従事するための技能レベルを確認します。試験は筆記・実技に分かれ、筆記試験は正誤判定による30問を出題、実技試験は上のカテゴリーより、現場を想定した実際の対応能力判定を行います。

 

続いて、彼らが従事できる業務についてです。

 ◇宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの
  提供に係る業務。
  あわせて、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務。
  (例:館内販売、館内備品の点検等)に付随的に従事することは可能。

又、受入れる企業の条件は、旅館業法規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた者であることなどですが、風俗営業や風俗営業法に規定される接待を行わせることはできません。
 
さらに、受け入れ企業は、国土交通省が設置する『宿泊分野特定技能協議会』の構成員になり、協議会に対し、必要な協力を行うことや、国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うことも定められています。少し手間がかかる印象ですが、これらの条件を満たした登録支援機関に委託することで条件をクリアすることもできます。
 
近年の外国人観光客は、東京や京都といった従来の大都市や有名観光都市にとどまらず、北海道から九州・沖縄まで、時には日本人があまり出向かないようなところにも押し寄せているようです。
 
大都市周辺ならまだしも、地方都市ではそもそも若年労働者が少なく、人手不足は深刻と言われています。
私は、地方における観光旅館、温泉旅館などでは、彼らの活用が今後不可欠になってくるのではないかと思っており、この辺りがビジネスチャンスになってくる可能性もあるのではないかと思っています。

 

では、最後に技能試験に関する最新情報をお届けします。

 

第3回 宿泊業技能測定試験
【試 験 日】 2020年1月19日(日)
【開催場所】 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇
【申込期間】 2019年11月19日(火)日本時間 13:00〜12月3日(火)12:00

 
 

執筆者紹介

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小栗 利治(おぐり としはる)
行政書士すばる法務事務所 代表

2009年脱サラし、行政書士事務所を開業。現在は、主に福祉事業の運営サポートや外国人在留資格業務を手掛ける。日本人・日本企業と外国人労働者が、共生できる関係を築けるよう、両者をサポートする業務に注力している。(行政書士 宅地建物取引士 1級FP技能士)
行政書士すばる法務事務所

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