特定技能「外食」とは?資格取得の注意点やポイントをご紹介!
この数十年で外食産業を取り巻く状況は大きく変化し、24時間営業の飲食店も珍しくなくなりました。
利用者視点では便利な世の中になったように感じますが、飲食店は常に人手不足の問題に直面しています。
こうした問題を解消すべく施行されたのが、外国人労働者を雇用する「特定技能制度」です。
この記事では、特に制度の概要や在留資格取得のポイントをご紹介します。
特定技能「外食」とは
そもそも特定技能制度とはどのようなものなのでしょうか。
外食産業でそうした制度の導入が決定した背景を踏まえてご説明します。
また特定技能「外食」を取得することで、どのような仕事に従事することができるようになるかを解説します。
外食業界に外国の人材を受け入れるための在留資格制度
特定技能制度は、特に人手不足が深刻な問題になっている14の業界において、人材を確保するために施行された在留資格制度です。
外国人労働者は各業界の特定技能を取得することで、一定期間日本での就労が認められます。
現状、新型コロナウイルスの影響で受け入れが滞ってしまっていると言う現状はありますが、今後事態が好転すればより多くの人材が日本へ渡ってくると考えられています。
外食業界で起きている人手不足の現状
コロナ禍以前は、新規開店やデリバリーサービスの普及によって外食産業における需要は拡大の一途をたどっていました。
特にクリスマスや年末年始など、さまざまなイベントの際には人手が不足する傾向にあり、高い時給を出しても人が集まらないことも珍しくありませんでした。
現在は営業自粛が相次ぐ影響もあり、外食需要は抑えられている傾向にあります。
しかしそうした制約がなくなれば、反動も相まってこれまで以上に外食産業には人手が必要になるとみられます。
そのため、今後のさらなる人手不足を見据え、早めの対策を講じなければならないのです。
特定技能を取得することでできるようになること
ここでは、特定技能制度を活用した場合に、外国人労働者はどのようなことができるようになるのかご紹介します。
大まかにまとめると、特定技能取得者は下記のような待遇およびサポートを得ることができます。
- ・5年間日本での就労目的の滞在が認められる
- ・フルタイムでの直接雇用
- ・日本人働者と同程度以上の給与
- ・入国前から出国までの生活にかかわる支援 など
日本で働き暮らしていく上で必要な支援を受けられ、なおかつ母国で働くよりも多くの賃金を受け取ることができるため、特定技能の取得を目指す外国人労働者は増えています。
特定技能「外食」取得者を受け入れることができる職種
外食分野で特定技能資格を取得すると、下記のような業務に従事できるようになります。
- ・キッチン業務をはじめとした飲食物調理業務
- ・ホール業務をはじめとした接客業務
- ・業務内容のひとつとして行われるデリバリー業務や皿洗い業務
上記のように飲食に関わる業務全般に携わることができるので、受け入れ側の事業者も人手不足を補いやすいといえます。
ただし飲食店の雇用であっても、完全にデリバリー業務や皿洗い業務のみに従事することは認められていませんのでご注意ください。
受け入れ企業側の注意点
特定技能制度を使って外国人労働者が日本での就労を行う際、受け入れを行う事業者も気をつけなければならないことがあります。
ここでは特に心がけるべき注意点をいくつかご紹介します。
雇用条件を整える必要がある
企業は原則自由に労働者の雇用条件を決めることができますが、最低限定められたラインは守らなければなりません。
フルタイムでの直接雇用や月給制の導入、日本人労働者と同程度以上の給与支給などがこれにあたります。
また、これ以外にも給与に関するトラブルは非常に生じやすいといえます。
職種別の平均賃金から大幅にかけ離れていないか、また技能実習を行っていた場合にはその時よりも給与を上げることができているかなどを主に確認しましょう。
また労働者本人から要望があった際には、条件の変更を検討することも大切です。
食品産業特定技能協議会への加入が必要
特定技能外国人の受け入れを行った事業者は、受け入れから4ヶ月以内に農林水産省が運営する「食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)」に加入する必要があります。
2022年時点では入会金や年会費等の徴収はありません。
協議会では、特定技能に関する制度や情報の周知が行われます。
「接待飲食等営業」で就労させないこと
特定技能を取得した外国人をキャバレーなどで接待業務に従事させることはできません。
いかなる形であれ、接待を伴う業務を行うことができないという認識でいましょう。
特に風俗営業法で規定されている店舗では、接待業務だけでなく調理や接客もできないので注意しなければなりません。
付随業務だけを行わせないこと
従事可能な業種の部分で簡単に触れましたが、フードデリバリーや清掃、皿洗いなどの業務だけをさせることは認められていません。
通常の調理業務や接客業務を行いながら、こうした業務に対応することは可能です。
そのため、事前にメインとなる業務を決めてから外国人労働者の雇用を決定することをおすすめします。
入管法違反に気をつける
特定技能制度の発足を機に外国人労働者の受け入れを拡充する一方で、不法就労に関する取り締まりはより厳しくなりました。
特に在留資格切れの外国人を労働させたり、入国管理局から認められている職種や時間を超えて労働させたりしてしまうことのないよう、細心の注意を払う必要があります。
実際に罰金判決が出ているケースも多々あるため、特定技能の取得有無にかかわらず不法就労を助長させない環境作りは必須だと言えます。
特定技能「外食」を取得するための要件
外食分野において特定技能在留資格を申請する際に提出する書類は、出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードが可能です。
申請書類は、大まかに「申請者に関するもの」「所属機関(受け入れ企業)に関するもの」「外食分野に関するもの」の3つに分けられます。
それぞれの項目で必要な書類をご紹介します。
日本語能力で一定の基準を満たす
日常生活や仕事で最低限のコミュニケーションを行うため、特定技能を取得する際には一定の日本語レベルを身につける必要があります。
日本語レベルを測るのは「国際交流基金日本語基礎テスト」と「日本語能力試験」です。
特定技能で在留資格を申請する際にはこの2つの試験のどちらかに合格すれば良いのですが、「日本語能力試験」については「N4」以上のレベルに合格する必要があります。
外食産業で働く上でのスキルを一定基準以上身につける
外食に関するスキルは、「外食業特定技能1号測定試験」で測られます。
この試験では外食産業で働く上で必要不可欠な、衛生管理や安全管理、接客に関する問題が出題されます。
日本語能力試験が日本語の能力そのものを測るものであるのに対し、こちらは実際の業務に直結する知識を問うものとなっています。
試験会場は日本国内の各地と、フィリピンやインドネシアをはじめとする6ヶ国に設けられています。
一般社団法人外国人食品産業技能評価機構の公式サイトでは、今後の試験日程や試験会場を確認できます。
日本語能力試験の難易度は?
日本語能力試験を受験する場合、特定技能取得の要件として認められるのは「N4」以上の合格です。
このN4というのは、「基本的な日本語の理解ができるレベル」の能力を認めるもので、日本で就労する上で必要最低限度の日本語スキルといえます。
5段階ある日本語能力試験の中で簡単な方から2つめとはなりますが、漢字の出題やリスニングがあるため、ゼロからの勉強であれば簡単とは言えない試験となっています。
ちなみに、合格ラインは180点満点のうち90点の取得です。
外食業特定技能1号測定試験の難易度は?
まだ明確な難易度を算出できるほどの試験が行われたわけではないため、参考程度の数値にはなってしまうのですが、2020年11月に行われた試験の合格率は47パーセントでした(4,211人中1,979人が合格)。
専門的な知識が問われる上、国内外問わず試験の問題が日本語で出題されることもあり、少し合格率が低めになっていると考えられます。
試験免除のための条件は?
外食分野での特定技能の取得には、ここまででご紹介してきた試験に合格する以外にも方法があります。
それが「医療・福祉施設給食製造技能実習評価試験(専門級)」の実技試験合格です。
受験資格は日本で24ヶ月以上の実務経験がある外国人技能実習生に限られるため、この条件は「技能実習2号良好修了」とも言い換えられます。
申請に必要な書類
外食分野において特定技能在留資格を申請する際に提出する書類は、出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードが可能です。
申請書類は、大まかに「申請者に関するもの」「所属機関(受け入れ企業)に関するもの」「外食分野に関するもの」の3つに分けられます。
それぞれの項目で必要な書類をご紹介します。
申請者に関する書類
申請者本人に関する必要書類は下記の通りです。
- 表紙
- 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表(第1表)
- 在留資格認定書交付申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書(第1-4号)
- 特定技能雇用契約書の写し(第1-5号)
- 雇用条件書の写し※別紙 賃金の支払(第1-6号)
- 雇用の経緯に係る説明書(第1-16号)
- 徴収費用の説明書(第1-9号)
- 健康診断個人票※別紙 受診者の申告書(第1-3号)
- 1号特定技能外国人支援計画書(第1-17号)
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(第1-25号)
- 二国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類
2.の「特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表(第1表)」に必要書類のチェックリストが付属しているので、事前に確認しておくと申請がスムーズになるでしょう。
また留学ビザから特定技能への切り替えを行う場合などは変更にあたるため、これらの書類では手続きできません。変更用の書類を用意しましょう。
所属機関(受け入れ企業)に関する書類
続いて、特定技能をもった外国人を受け入れる事業者にかかわる書類です。
かなり多くの書類を提出する必要があるため、早めに必要書類を確認して準備をはじめましょう。
- 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
- 特定技能所属機関概要書(第1-11号)
- 登記事項証明書
- 業務執行に関与する役員の住民票の写し
- 特定技能所属機関の役員に関する誓約書(第1-23号)
- 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
- 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し
- 税務署発行の納税証明書(その3)
- 法人住民税の市町村発行の納税証明書(直近1年分)
14.の特定技能所属機関概要書では、受け入れを行う施設における支援体制を事業所や店舗ごとに詳細にわたって記載する必要があります。
外食分野に関する書類
ここまでの申請書類は他の特定技能で外国人の受け入れを行う場合と共通のものでしたが、下記でご紹介する書類は、特に外食分野で特定技能の申請を行う際に必要なものです。
試験免除の方式で取得するか、試験を受験するかで提出する書類が異なります。
- ・試験免除(技能実習2号の良好修了者)の場合
- 医療・福祉施設給食製造技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し
- 技能実習生に関する評価調書
22.〜23.のどちらかの提出が求められていますが、受け入れ機関が申請者を過去受け入れたことがある場合に限り、どちらも省略することができます。
- ・試験を受験して資格を取得する(上記以外)場合
- 外食業特定技能1号技能測定試験の合格証明書の写し
- 日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し
- 国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書(判定結果通知書)の写し
25.と26.についてはどちらか一方の提出で問題ありません。
- 保健所長の営業許可証又は届出書の写し
- 外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(特定技能所属機関)
- 協議会の構成員であることの証明書(特定技能所属機関)
29.については特定技能外国人の初回の受入れから4ヶ月以上経過している場合に必要となります。今回が初回の受け入れとなる場合には、受け入れから4ヶ月以内に協議会の構成員になる必要があります。
そして、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する際には、下記の書類も追加で必要になります。
基本的にこれらの書類は委託先の機関が用意するものとなるので、登録を委託する際には追加で特別な手続きを踏む必要はありません。
- ・外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(登録支援機関のもの)
- ・協議会の構成員であることの証明書(登録支援機関のもの)
特定技能取得後を見据えて
特定技能を取得するためには、外食に関する知識や基本的なレベルの日本語能力が必要になります。
しかし、それらの勉強は資格を取得するためだけのものではありません。
実際の業務や日常生活で活かせてこそスキルを身につけたと言えるでしょう。
こうした背景を踏まえ、外食分野で特定技能を取得するための学習面でのポイントをご紹介します。
試験対策や就労時に必要な能力
「日本語能力試験」や「外食業特定技能1号測定試験」の試験については先ほど触れた通りですが、これらの試験に合格するためには一般的に使われる日本語や、各分野に関する日本語の習得が必要不可欠です。
また、実際に就労する際には安全かつ円滑に仕事をするための日本語力が求められます。
幅広い範囲の日本語を正しく身につけることで、さらなるスキルアップも望めます。
外食産業に関する日本語の習得
外食産業に関する試験では、大きく分けると下記3科目の問題が出題されます。
- ・衛生管理
- ・飲食物調理
- ・接客全般
これらの知識を身につけることで、それぞれの業務で役立たせることができるのはもちろん、自分が従事していない他業務への理解を育むこともできます。
学習する際には、3科目すべてをまんべんなく学習するようにしましょう。
学習にeラーニングは使える?
新型コロナウイルスの影響で、学習にeラーニングを用いる人や団体が増えています。
当面はこのような状況が続くとみられる上、その後もeラーニングの普及は更に進むと考えられます。
eラーニングを用いた学習は時間や場所の制約を受けにくいため、忙しい中でも学習を続けやすい方法だといえます。
またテキストだけではなかなかできない、音声の確認をしながらの学習を進めることもできます。
オンラインレッスンでは、講師との会話を通じて日常生活や仕事で使える日本語を学び、その場でフィードバックがもらえるため、発話をすることに対しての自信もつきます。
さらにeラーニングでの自習と並行して講師とのオンラインレッスンを受講すると、インプットとアウトプットの両立が可能です。
そのため最短ルートで日本語能力を高めたい時にも、eラーニングの活用はもってこいだといえます。
最適な学習方法を選択して効果的な人材の育成を!
特定技能制度を使って外国から労働者を受け入れることができれば、人手が不足している現状の大幅な改善が期待できます。
そのためには、日本で働きたいと思ってもらえること、そして日本語の能力を身につけてもらうことが大切です。
外国人労働者の受け入れを行う際には、しっかりと使えるレベルの日本語を学べるよう充実した教育体制を整えましょう。
「MANABEL JAPAN」では日本で働く外国人に向けた教育サービスを展開しています。
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外食産業にかかわる専門的な会話表現も網羅しており、外国人労働者のコミュニケーションに対する不安を取り除くことができます。
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