センパイ企業に聞く【外国人雇用の心得】その2
センパイ企業に聞く【外国人雇用の心得】その2
「外国人労働者」という言葉がマスコミを賑わすようになり、人材紹介関連のビジネスもずいぶん活気づいているようです。そこで、改めて外国人雇用のメリットを考えてみましょう。
H30年愛知県「地域労働力確保支援事業」アンケート調査にて
外国人を雇用した理由を「外国人のほうが利点が多いから」と答えた74社の自由回答
出典:https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/220166_649151_misc.pdf
実際に最も多く聞かれる雇用主の声は『働く意欲が高い』ということ。私がヒアリング調査をした中でも「職場の雰囲気が明るくなった」「日本人社員の刺激になっている」という声が複数聞かれ、中には「逆に日本人社員の意欲の低さが目立って困る」という人もいました。
しかし、そうした外国人雇用のメリットを長期的に享受するためには、言葉と文化の壁を包み込む懐の深さが必要です。特に中小企業では社長の考え方が社員の態度や行動に大きく影響するため、社長自身が揺るぎないポリシーを持っていることが重要だと思います。
今回ご紹介する『外国人雇用の心得』は次の2つ。いずれも外国人を10年以上雇用し、上の表のようなメリットをしっかり享受している中小企業トップの名言です。
“忙しい時こそ、気晴らしが大事”
これは自動車部品製造会社の社長の言葉ですが、この会社では繁忙期にあえて社員旅行をしたり懇親会を開いたりするそうです。結束力を高めて繁忙期を乗り切るため、少しだけ回り道をして仕事の効率化を図るということでしょう。
外国人雇用に限ったことではありませんが、繁忙期はどうしても社内が殺伐としがち。日本語が十分理解できない外国人の場合、社内の雰囲気が悪いと尚さらストレスがたまります。
社員旅行まではできなくても、せめて「今は忙しいからがんばろう!」とやさしく声をかけてあげると良いと思います。
“従業員に感謝の気持ちを持てるかどうかが何より大事。
その根っこがしっかりしていれば、大抵のことは乗り越えられます”
「感謝の気持ちをもつ」ことは、頭では分かっていても心から思うのはなかなか難しいかもしれません。トラブルを含む様々な経験を経て根っこは育つのだと思いますが、意識するかどうかによって育つスピードは変わるはず。
もし何かうまくいかないことが生じたら、「そうはいっても感謝しなきゃ」と自分に言い聞かせてみてください。懐が1cm深まるだけで、見える世界はぐんと広がるかもしれませんから。
文化や常識のちがう外国人を雇用する上では、時にデメリットを感じることもあるかもしれません。しかしそれを上回るメリットを得られるかどうかは社長次第。日本人か外国人かに関わらず、個々のパフォーマンスを最大限引き出すための経営哲学を自ら築いていただきたいと願っています。
執筆者紹介
牧野佳奈子(まきのかなこ)
一般社団法人DiVE.tv(ダイブ ドット ティヴィ)代表
2007年にテレビ報道記者を辞めてフリーランスとなり、多文化共生をテーマに国内外を取材。2015年にインターネットのニュースサイト「DiVE.tv」を設立し、愛知県内に住む様々な国籍・在留資格の外国人を動画等で紹介している。2017年から外国人雇用現場の取材を本格的に始め、2018年に「あいちの働く外国人白書~ほんとはどうなの?技能実習生の今~」を発刊。講演やセミナーも実績多数。
多文化市民メディア DiVE.tv