【育成就労制度を知る 第1回】制度創設の背景と全体像 ― なぜ「技能実習」は廃止されるのか

この記事でわかること

  • 育成就労制度が誕生した社会的背景
  • 技能実習制度が抱えてきた構造的な課題
  • 育成就労制度の基本コンセプトと全体像
  • 施行スケジュールと、企業が押さえておくべきポイント

 

2024年6月、出入国管理及び難民認定法等の改正案が国会で成立し、約30年続いた技能実習制度の廃止と、新たな在留資格「育成就労」の創設が正式に決定しました。改正法は2024年6月21日に公布され、育成就労制度は一部の規定を除き、2027年4月1日に施行される予定です。

「名前が変わるだけではないのか」「実務はそれほど変わらないのでは」と感じている経営者・人事担当者の方も少なくないでしょう。しかし、育成就労制度は理念・対象分野・転籍ルール・日本語要件のすべてが再設計された、まったく新しい外国人雇用の枠組みです。

本シリーズでは全5回にわたって、育成就労制度の全体像から実務対応までを丁寧に解説していきます。第1回となる今回は、まず「なぜこの制度が必要とされたのか」という出発点を整理します。

1. 技能実習制度が抱えてきた3つの構造的課題

育成就労制度を理解するうえで欠かせないのが、その前身である技能実習制度の歴史的背景です。1993年に始まった技能実習制度は、本来「開発途上国への技能移転による国際貢献」を目的としていました。ところが運用実態は、人手不足を補う労働力確保の側面が強くなり、制度の建前と実態の乖離が長年指摘されてきました。

1-1. 制度目的と実態の乖離

技能実習制度の目的は「国際貢献」であり、原則として実習生は転籍が認められない仕組みでした。これは「特定の企業で技能を修得する」という建前に基づいたものです。しかし現実には、農業・建設業・製造業など人手不足が深刻な現場を支える基幹労働力として機能しており、目的と実態がかみ合っていませんでした。

1-2. 人権侵害・失踪問題の長期化

転籍が原則できない構造は、ハラスメント・賃金未払い・劣悪な居住環境といった問題が起きても、実習生が逃げ場を持てないという深刻な副作用を生みました。出入国在留管理庁の統計では、年間9,000人超の失踪者が発生した時期もあり、米国国務省の人身取引報告書でも繰り返し問題視されてきました。

1-3. キャリアパスの不在

技能実習を3〜5年で終えた後、引き続き日本で働き続けたい場合は特定技能への移行が必要ですが、両制度は別々に設計されているため、試験要件や対象分野のズレが生じていました。「実習中に培った技能をスムーズに次のステップへつなげられない」という不満は、企業・外国人材の双方に存在していました。

2. 育成就労制度が目指すもの ― 「人材確保」と「人材育成」の両立

こうした課題を踏まえ、政府の有識者会議(2022年〜2023年)は約1年半にわたる議論を経て、最終報告書をまとめました。そこで示された新制度の骨格が、育成就労制度です。

新制度の理念は明快で、目的に「人材確保」と「人材育成」の双方を据えた点が最大の特徴です。

項目 技能実習制度 育成就労制度
制度目的 国際貢献(技能移転) 人材確保+人材育成
在留期間 最長5年 原則3年(特定技能1号へ移行可能)
転籍 原則不可 本人意向による転籍可(要件あり)
受入分野 92職種169作業 特定技能の分野と原則一致(再整理予定)
日本語要件 一律の入国時要件は原則なし

※介護など一部職種では個別要件あり

就労開始までにA1相当以上の試験合格、または相当する日本語講習の受講
監督機関 外国人技能実習機構(OTIT) 外国人育成就労機構(OTITを改組)

 

ポイントは、育成就労制度が特定技能制度と一気通貫のキャリアパスとして設計されていることです。「育成就労(3年)→ 特定技能1号(5年)→ 特定技能2号(無期限・家族帯同可)」という流れで、外国人材が長期にわたって日本で活躍できる道筋が、ようやく一本につながります。

3. 育成就労の基本構造

新制度の基本構造を、4つの観点から押さえておきましょう。

3-1. 在留資格の新設

「育成就労」という新しい在留資格が創設され、特定技能1号水準の技能を有する人材を3年間で育成することが目的とされます。3年間の修了時には、特定技能1号への移行に必要な技能試験・日本語試験の合格が求められます。

3-2. 受入対象分野の整合化

技能実習で見られた「対象職種は多いが、特定技能には対応していない」という不整合を解消し、育成就労の対象分野は原則として特定技能の分野と一致させる方向で整理されます。これにより、育成就労で技能を磨いた人材が、そのまま特定技能へスムーズに移行できるようになります。

3-3. 転籍の柔軟化

育成就労制度では、本人の意向による転籍が条件付きで認められます。具体的には、同一機関で1〜2年(分野により異なる)就労した後に、技能や日本語の要件を満たせば、同一分野内での転籍が可能となる見込みです。技能実習制度と比べ、本人意向による転籍が一定の要件のもとで認められる点は、大きな変更点です。ただし、無条件に転籍できるわけではなく、就労期間、技能・日本語能力、転籍先の適正性などの要件を満たす必要があります。

3-4. 監理支援機関への再編

技能実習における「監理団体」は、新制度では「監理支援機関」へと再編されます。許可要件はより厳格化され、外部監査人の設置義務、受入企業からの独立性確保など、ガバナンスを強化する方向で議論が進んでいます。

4. 施行スケジュールと、いま企業が押さえるべきこと

育成就労制度は一部の規定を除き、2027年4月1日に施行される予定です。一見まだ余裕があるように見えますが、企業の実務への影響は決して小さくありません。

  • 既存の技能実習生をどう扱うか(経過措置あり)
  • 新しい契約書・就業規則の整備
  • 日本語教育・キャリア支援体制の構築
  • 監理支援機関との関係再構築
  • 転籍リスクを織り込んだ採用・定着戦略

特に転籍が認められることの影響は大きく、「採用したら終わり」ではなく、選ばれ続ける受入企業になるという発想が不可欠になります。

まとめ

今回は、育成就労制度が誕生した背景と、その全体像を確認しました。重要なのは、本制度が単なる「技能実習の名称変更」ではなく、人材確保と人材育成を両立させる新しい枠組みとして設計されている点です。

次回(第2回)は、もっとも質問の多い「技能実習・特定技能との違い」を、表と具体例を交えて徹底比較します。

MANABEL JAPANは2026年8月、育成就労制度に対応予定です

外国人材の在留資格手続きや支援記録の管理は、書類点数も法令対応の負荷も年々増加しています。新制度の施行を前に、いまからペーパーレスかつ一元管理できる仕組みを整えておくことが、現場の混乱を防ぐ最大の備えです。

人材管理システム MANABEL JAPAN は、2026年8月に育成就労制度への対応を予定しています。特定技能・技能実習の運用実績で培った帳票自動生成・タスク管理・支援記録機能を、新制度にもそのまま展開できます。

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