人材確保戦略としての「特定技能」活用法(2)―外食―
人材確保戦略としての「特定技能」活用法(2)―外食―
今回は、「特定技能」外食分野についてのお話です。
この記事をお読みいただいている皆様の多くも、入った飲食店で外国人が接客業務に従事していても、そのことに違和感を持たないのではないでしょうか。それ程、彼ら外国人は飲食業界の中に溶け込んでいるといえます。
実は彼らの多くが日本語学校を始めとする留学生です。
留学生は週28時間を限度に、単純労働と呼ばれる分野で働くことが可能であるため、多くの留学生が外食産業で働いています。この分野の雇用は、ある意味彼らによって支えられていると言っても過言ではありません。
しかし、留学生には労働時間制限以外にも超えられない壁があります。
以前、ある飲食店経営者から、「日本語学校の留学生をアルバイトとして雇っているのだが、真面目で良く働くので、是非卒業後も正社員として続けて働いてもらいたいのだがどうしたらよいか」と相談を受けたことがあります。
昨年までであれば、答えは「残念ですがそれはできません。」のほぼ一択でした。
永住者、定住者、日本人の配偶者など限られた資格を持った外国人以外は、単純労働分野には就労できなかったからです。留学生のアルバイトも、彼らを卒業後あるいは途中でフルタイムの従業員として雇い入れる事は、ほとんど不可能だったのです。
が、しかし、これからは違います。
「特定技能」を活用できれば、大手チェーン店のみならず中小事業者においても、比較的容易に外国人をアルバイトではなく、フルタイムとして雇用することができるようになります。
調理場やホールスタッフはもちろん、宅配やテイクアウト専門店などで働いてもらうこともできます。
つまり
留学生のアルバイト→フルタイム従業員
への道が開かれるということです!
政府の計画では、外食業分野における5年間の「特定技能」による外国人就労者の受け入れ予定は5万3千人です。一方試算では、外食業分野は今後5年間で29万人の人手不足が生じるとされています。その一定割合を、今までどおり留学生と、「特定技能」が担うことになってくると私は考えます。
ちなみに肝心の技能試験はすでに3回実施され、4、5回目の実施も決定しています。第1回から第3回試験の合格者数は合計で1,500人程度です。
前にご紹介した介護同様、この分野もすでに求人が可能な分野となっています。
さらに第4,5回目は合わせて6,500人を超える規模の試験が行われるようですから合格者は一気に増えそうです。特定技能すべての分野の中でも最も進行が速い分野であります。
今のところ、外食分野での「特定技能」による受け入れ実績はわずか40名程度にとどまっています。しかし、外食分野には技能実習制度はありませんので、受け入れ側にこの制度のメリットが浸透し始めれば、一気に拡大する可能性もあります。例えば今いる留学生アルバイトを「特定技能」の資格に切り替えて雇用するといったことも検討する価値があるのではないでしょうか。
最後に今後の試験についての情報をお伝えします。
第4回は下記日程で開催されます(受付は終了しています)
第5回(予定)
なお、海外でも試験実施が決定しているものもあります。
試験実施国 フィリピン
日 程 2019年10月18日~ 試験予約受付開始
2019年11月2日~2020年3月中旬 試験実施
・マニラ 11月2日~
・セブ 11月5日~
・ダバオ 11月28日~
試験実施国 ミャンマー(2020年1月以降実施予定)
執筆者紹介
小栗 利治(おぐり としはる)
行政書士すばる法務事務所 代表
2009年脱サラし、行政書士事務所を開業。現在は、主に福祉事業の運営サポートや外国人在留資格業務を手掛ける。日本人・日本企業と外国人労働者が、共生できる関係を築けるよう、両者をサポートする業務に注力している。(行政書士 宅地建物取引士 1級FP技能士)
行政書士すばる法務事務所