特定技能「宿泊」とは?取得のポイントを含めてご紹介!

コロナ禍以前、宿泊業界はインバウンド需要の拡大によって深刻な人手不足に陥りました。

そしてまた、感染拡大の収束や規制緩和などにより、同様の問題が起こると考えられています。この記事では、不足した人材を補うために施行された特定技能制度について、宿泊分野に主眼を置いてご説明します。これからに備え、人材の確保を進めている担当者の方は必見です。

 

特定技能「宿泊」とは

 

そもそも特定技能とはどのようなものなのでしょうか。宿泊分野における特定技能制度が生まれた背景を含めて、特定技能制度の概要をご説明します。

また、特定技能制度を使って在留資格を取得すると従事できるようになる業務についての解説も行います。

 

人手不足の業界に人材を受け入れるための在留資格制度

 

各業界で起きている人手不足問題を解消するため、外国人労働者を積極的に受け入れる「特定技能」制度が2019年に発足しました。

この制度では宿泊業界を含む14の業種において、それぞれの業界での就労を条件に、在留資格を与えることとなっています。

待遇や雇用など、就労に関する待遇の保証はもちろん、暮らしに関するサポートについても厚生労働省によって規定されました。そのため、外国人労働者は「特定技能」を取得することで日本で生活しやすくなるといえます。

 

宿泊業界で起きている人手不足の現状

 

新型コロナウイルスの影響で海外から訪れる観光客が激減するまでは、宿泊業界では人手不足が激化していました。年々拡大するインバウンド需要に備え、たくさんの宿泊施設が作られたのが主な要因です。東京オリンピックの開催決定もその勢いに拍車をかけました。

こうした宿泊業界の人手不足はコロナ禍が明け、人々が自由に移動できるようになると、更に深刻化すると考えられています。

今後を見据え、今のうちに対策を講じる必要があるのです。

 

特定技能「宿泊」を取得することで得られる待遇

 

それでは、外国人労働者は特定技能を取得し在留資格を得ることで、どのような待遇を受けられるようになるのでしょうか。

大まかにまとめると、特定技能を取得した外国人は下記のような待遇やサポートを得られます。

 

  • 5年間日本での就労目的の滞在が認められる
  • フルタイムでの直接雇用
  • 日本人働者と同程度以上の給与
  • 入国前から出国までの生活にかかわる支援 など

 

就労の条件が整っているのはもちろん、日本で生活するためのサポートも受けることができるため、特定技能の取得を目指す外国人は多いといいます。

 

特定技能「宿泊」の取得後できるようになる業務

 

実際の業務では、どのような仕事に従事できるのかご説明します。

宿泊分野で特定技能を取得した場合、宿泊施設において下記のような業務を担当できます。

 

  • フロント業務
  • 企画
  • 広報
  • 接客
  • レストランでのサービス
  • 付随的に行われる館内清掃や設備点検 など

 

これを見て分かる通り、幅広い業務対応が可能です。

ただ、館内の清掃や設備点検はあくまで付随業務としなければならず、専任してはいけないことになっています。

 

受け入れ企業側の注意点

 

続いて、特定技能を取得した外国人労働者の受け入れを行う企業側からの視点で、注意点をご紹介します。

一歩間違うと法律違反になってしまうこともあり得るので、「知らなかった」という事態は避けるようにしましょう。

 

雇用条件を整える必要がある

 

企業は原則自由に労働者の雇用条件を決めることができますが、当然最低限定められたラインは守らなければなりません。

フルタイムでの直接雇用や月給制の導入、日本人労働者と同程度以上の給与支給などがこれにあたります。

また、たとえ法令で定められている基準を満たしていても、給与に関するトラブルは生じやすいといえます。

職種別の平均賃金から大幅にかけ離れていないか、また過去に技能実習を行っていた場合には、その時よりも給与を上げることができているかなどを主に確認しましょう。

また労働者本人から要望があった際には、条件の変更を前向きに検討する姿勢を持つことも非常に重要です。

 

接待を伴う業務は禁止

 

これは外食など他の特定技能分野でも同様ですが、特定技能外国人は接待を伴う業務に従事することが禁じられています。

通常の宿泊業務に付随するものだったとしても認められないため、注意しておく必要があります。

 

特定技能外国人を雇用できない宿泊施設がある

 

宿泊施設であればどんな施設でも、特定技能取得者の雇用ができるわけではありません。

下記のような施設では特定技能外国人を雇用することができないので気をつけましょう。

 

  • 簡易宿泊所
  • 下宿営業施設
  • ラブホテル
  • モーテル

 

旅館業法において「旅館・ホテル営業」の許可を受けている事業者にのみ、宿泊分野での特定技能取得者の雇用は許可されています。

もし判断に迷う場合には、警察庁の資料を参考にしてみてください。

 

協議会への加入が必須

 

特定技能を取得した外国人を雇用するためには、国土交通省が設置した「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になる必要があります。

初回の受け入れから4ヶ月以内の加入が義務となっているため、加入時期には注意しましょう。

詳細は国土交通省・観光庁の公式ホームページで、【宿泊分野特定技能協議会】の箇所を参照してください。

 

入管法違反に気をつける

 

特定技能制度の発足を機に外国人労働者の受け入れを拡充する一方で、不法就労に関する取り締まりはより厳しくなりました。

特に在留資格切れの外国人を労働させたり、入国管理局から認められている職種や時間を超えて労働させたりしてしまうことのないよう、細心の注意を払う必要があります。

実際に入管法(出入国管理及び難民認定法)違反で罰金判決が出ているケースもあるため、特定技能の取得有無にかかわらず不法就労を助長させない環境作りは必須だといえます。

 

特定技能1号を取得するための要件

 

続いて、特定技能1号の在留資格を宿泊分野で取得する際の要件に関してです。

これは他の特定技能領域でも同様のことが言えるのですが、在留資格を得るために必要な能力は「仕事や生活に必要な日本語の能力」と「仕事そのものの能力」になります。

ここからは必要なスキルを参照しながら、具体的に取得しなければならない資格などについてご説明します。

 

日本語のスキルで一定の基準を満たす

 

日本語レベルを測るのは「国際交流基金日本語基礎テスト」と「日本語能力試験」です。

特定技能で在留資格を申請する際にはこの2つの試験のどちらかに合格すれば良いのですが、「日本語能力試験」については「N4」以上のレベルに合格する必要があります。

 

宿泊関連のスキルで一定の基準を満たす

 

宿泊業で実際に働く上で必要になるのは、フロント業務や接客業務を問題なくこなす能力です。また、ホテルや旅館にはレストランや食事処が併設されているケースも多いため、そこでの業務知識も求められます。

この能力を測るのは「宿泊業技能1号測定試験」で、上記でご紹介した日本語の能力を測る試験と併せて特定技能取得の要件になっています。

宿泊業技能1号測定試験においては、下記5分野から問題が出題されます。

 

  • 「フロント業務」
  • 「広報・企画業務」
  • 「接客業務」
  • 「レストランサービス業務」
  • 「安全衛生その他基礎知識」

 

どの分野も実際に働く上で非常に大切になってくるものなので、試験だけでなくその後の実務も見据えて勉強する必要があります。

 

日本語試験の難易度はどのくらい?

 

日本語能力試験を受験する場合、特定技能取得の要件として認められるのは「N4」以上の合格です。

このN4というのは、「基本的な日本語の理解ができるレベル」の能力を認めるもので、日本で就労する上で必要最低限度の日本語スキルといえます。

5段階ある日本語能力試験の中では易しい方から2段階目と比較的難易度は低い部類ではありますが、漢字の出題やリスニングがあるため、ゼロからの勉強であれば簡単とは言えない試験となっています。
また、英語等と比較すると日本語はそもそも学習難易度が高いため、試験も必然的に難しく感じるとも言われています。合格ラインは180点満点のうち90点の取得です。

 

宿泊業技能1号測定試験の難易度はどれくらい?

 

まだ試験の実施回数がそこまで多くないため、実際のデータを使って難易度を把握するのは難しいですが、ここでは参考までに2021年4月に行われた試験の合格率を紹介します。

この試験での合格率は41.37パーセント(受験者数:394名)でした。受験者の半数以上は合格できていないため、決して易しい試験でないのはお分かりいただけると思います。

ただ、しっかりと対策を行ったうえで試験に臨めば、合格できる確率は高まります。

効果的な学習ができるよう心がけるようにしましょう。

 

試験免除のための条件

 

上で述べたように、基本的には試験に合格しなければ特定技能の取得はできませんが、条件によっては試験が免除されます。

特に技能実習生として日本で経験を積んでいるのであれば、活用したい制度です。

 

宿泊分野の2号技能実習を良好に修了

 

試験免除の条件は、日本での技能実習を良好に修了することです。

宿泊分野で、3年間の実習を無事に修了することができれば、特定技能への在留資格切り替えが可能になります。問題なく3年間日本で就労していたという実績から、日本での就労や生活に問題がないと判断されるためです。

技能実習を「良好に修了」したかどうかは、実習実施者が複数の評価項目から決定します。

なお、切り替えに時間がかかってしまい在留期間に猶予が無い場合、特例措置として「特定活動」を最大4ヶ月まで行うことができます。

これは所属予定の企業での就労が認められるもので、準備ができ次第特定技能への切り替えが可能となります。

 

申請に必要な書類

 

宿泊分野において特定技能在留資格を申請する際に提出する書類は、出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードが可能です。

申請書類は、大まかに「申請者に関するもの」「所属機関(受け入れ企業)に関するもの」「宿泊分野に関するもの」の3つに分けられます。

それぞれの項目で必要な書類をご紹介します。

 

申請者に関する書類

 

申請者本人に関する必要書類は下記の通りです。

 

  1. 表紙
  2. 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表(第1表)
  3. 在留資格認定書交付申請書
  4. 特定技能外国人の報酬に関する説明書(第1-4号)
  5. 特定技能雇用契約書の写し(第1-5号)
  6. 雇用条件書の写し※別紙 賃金の支払(第1-6号)
  7. 雇用の経緯に係る説明書(第1-16号)
  8. 徴収費用の説明書(第1-9号)
  9. 健康診断個人票※別紙 受診者の申告書(第1-3号)
  10. 1号特定技能外国人支援計画書(第1-17号)
  11. 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(第1-25号)
  12. 二国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類

 

2.の「特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表(第1表)」に必要書類のチェックリストが付属しているので、事前に確認しておくと申請がスムーズになるでしょう。

また留学ビザから特定技能への切り替えを行う場合などは変更にあたるため、これらの書類では手続きできません。こちらを参考に、変更用の書類を用意しましょう。

 

所属機関(受け入れ企業)に関する書類

 

続いて、特定技能をもった外国人を受け入れる事業者にかかわる書類です。

かなり多くの書類を提出する必要があるため、早めに必要書類を確認して準備をはじめましょう。

 

  1. 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
  2. 特定技能所属機関概要書(第1-11号)
  3. 登記事項証明書
  4. 業務執行に関与する役員の住民票の写し
  5. 特定技能所属機関の役員に関する誓約書(第1-23号)
  6. 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
  7. 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し
  8. 税務署発行の納税証明書(その3)
  9. 法人住民税の市町村発行の納税証明書(直近1年分)

 

14.の特定技能所属機関概要書では、受け入れを行う施設における支援体制を事業所ごとに詳細にわたって記載する必要があります。

 

宿泊分野に関する書類

 

ここまでの申請書類は他の特定技能で外国人の受け入れを行う場合と共通のものでしたが、下記でご紹介する書類は、特に宿泊分野で特定技能の申請を行う際に必要なものです。

試験免除の措置を受けて技能実習からの切り替えを行うか、試験を受験するかで提出する書類が異なります。

 

  • 試験免除(技能実習2号の良好修了者)の場合
  1. 技能実習2号良好修了者であることを証明する書類

 

  • 試験を受験して資格を取得する場合
  1. 宿泊業技能1号測定試験の合格証明書の写し
  2. 日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し
  3. 国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書(判定結果通知書)の写し

 

24.と25.についてはどちらか一方の提出で問題ありません。

なお、宿泊分野での技能実習制度は2020年からスタートしたため、2022年現在では特定技能への切り替えを行った事例がありません。今後必要書類が変更になる可能性もあるため、最新の情報を確認するようにしてください。

 

これらに加え、下記の書類も必要です。

 

  1. 旅館業許可証(旅館・ホテル営業許可書)の写し
  2. 宿泊分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(特定技能所属機関)
  3. 受け入れ事業所が協議会の構成員であることの証明書

 

28.は、特定技能外国人の初回の受入れから4ヶ月以上経過している場合に必要となります。受け入れ初回の申請を行う場合、4ヶ月以内に宿泊分野特定技能協議会に加入しなければなりません。

 

また、特定技能外国人の支援計画実施を委託する際には、下記の書類が必要になります。ただし、これらの書類は委託先の企業が用意するものとなるため、特別に書類を用意する必要はありません。

 

  1. 宿泊分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(登録支援機関のもの)
  2. 協議会の構成員であることの証明書(登録支援機関のもの)

 

特定技能取得後を見据えた学習

 

正しい書類を作成し、それに従って受け入れ環境を作るのはもちろんのことですが、それでも試験の結果が芳しくなければ特定技能の取得はできません。

そのため、求められているレベルにまでスキルを高めなければなりません。

また、特定技能取得後に実務を行う際に活きるような勉強を行うことも大切です。

そうしたことを踏まえ、宿泊分野で特定技能を取得するための学習面でのポイントをご紹介します。

 

試験対策や就労時に必要な能力

 

「日本語能力試験」や「宿泊業技能1号測定試験」については先ほど触れた通りですが、この試験に合格するためには一般的に使われる日本語や、各分野に関する日本語の習得が必要不可欠です。

また、実際に就労する際には安全かつ円滑に仕事をするための日本語力が求められます。

幅広い範囲の日本語を正しく身につけることで、さらなるスキルアップも望めます。

 

宿泊に関する日本語の学習方法

 

「宿泊業技能1号測定試験」については、現在テキストは用意されていません。そのためインターネットや宿泊業に関する書籍などで独学する必要があります。

今後、宿泊団体からテキストが発行される予定ではあるそうですが、発行時期は未定のようです。

宿泊業技能試験センターのホームページから、過去問やサンプル問題を確認することができるので、それらを参考に勉強する形になります。

 

「日本語能力試験」については、テキストや教育カリキュラムを提供している組織は数多くあるため、受講者本人に合った方法を選択することが望ましいです。

ただ、特に実践的な日本語に関する学習に関してはテキストだけでなく、実際にコミュニケーションを取りながら覚えた方が早く身につくといえます。

 

eラーニングは活用できる?

 

昨今のコロナ禍において、外国人に対して直接日本語を教えることへのハードルは急激に上がってしまいました。まだ当面はこうした状況が続くと考えられますが、そこで挙がってくるのがeラーニングという選択肢です。

eラーニングは、忙しい中でも時間を確保しやすく、受講場所に縛られない自由度の高さを特徴としています。またテキストだけではできないような、音声の確認をしながらの学習を進めることもできます。

オンラインレッスンでは、講師との会話を通じて日常生活や仕事で使える日本語を学び、その場でフィードバックがもらえるため、発話をする自信もつきます。

さらにeラーニングでの自習と並行して講師とのオンラインレッスンを受講すると、インプットとアウトプットの両方ができるため、日本語能力を高めるのにもってこいだといえます。

 

今後の人手不足を見越して一足先の対策を!

 

特定技能制度を使って在留資格を得る際には、もちろん試験への合格は大切です。

しかし、最終目的は日本語を使って業務に従事することです。

そのため外国人労働者の受け入れを行う際には、しっかりと使えるレベルの日本語を学べるよう充実した教育体制を整えましょう。

「MANABEL JAPAN」では日本で働く外国人に向けた教育サービスを展開しています。

シーンで学ぶ! 実践宿泊の日本語会話トレーニング講座(ベトナム語対応)」は、実際にホテルや旅館などの現場でよく使われる会話の練習ができるeラーニングコンテンツです。

専門的な会話表現も網羅しており、外国人労働者のコミュニケーションに対する不安を取り除くことができます。

他の分野の特定技能に対応したeラーニングコンテンツも充実しているので、ぜひ一度ご相談ください!

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