【2021年】最新資料から読み解く「特定技能」の現状
【2021年】最新資料から読み解く「特定技能」の現状
2019年4月に施行された新しい在留資格「特定技能」。日本政府は14ある特定技能の分野それぞれの今後5年間の受け入れ目標人数を設定していました。しかし、現状としては新型コロナウイルスの影響もあり、目標人数達成には大きく遅れるペースの受け入れ人数に留まっています。
今回は日本政府が公表している特定技能外国人に関する資料を読み解きながらその現状の解説をしていきます。
特定技能外国人受け入れ人数が伸び悩む理由
出入国在留管理庁より特定技能外国人の受け入れ状況についての資料が公表されており、現在まで2019年6月末から2021年3月末まで3カ月おきに、日本に在留している特定技能外国人の人数が公表されています。
2019年6月末と2021年3月末の在留数データを比較すると、全体の人数では20名であったのが1年9カ月の間に22,567名まで増えています。
人数だけを比較すると特定技能外国人の受け入れが順調に進んでいるように見えますが、日本政府が公表していた受け入れ見込数は5年間で345,150名の受け入れであったため、いかに計画通りに受け入れが進んでいないかが分かります。
遅れが出ている最大の理由は新型コロナウイルスの影響によることが想像できますが、そのほかの理由の一つが「制度の煩雑さ」だと言えます。
特定技能制度はまだ新しい在留資格であるため、申請に必要な書類の内容や手続きについても頻繁に更新されています。特に特定技能外国人の母国との取り決めなどは未だに詳細な取り決めが決まっていない国もあり、協議の内容によっては突然、申請手続きの流れが変わることも珍しくありません。
例えば、カンボジア国籍・タイ国籍・ベトナム国籍の外国人に特定技能の在留資格を取得させる場合はまず各国が発行する書類や認証手続きを経た上で、それを特定技能の申請の際に出入国在留管理庁へ申請書類と一緒に提出することが求められています。
その他の国でも出入国在留管理局への提出は求められないまでも、それぞれの国の機関より許可を得たり、一定の手続きが求められている場合があります。
また、特定技能制度では14分野それぞれに協議会が設置されており、協議会は企業が特定技能外国人を受け入れするための要件をみたしているのかなどを確認する役割を担っています。特に製造業分野ではそれらの手続きを進めて途中で協議会に加入できず、受け入れを断念する企業もあります。
これらの頻繁な手続きや法律の更新、協議会の加入などの不確定要素も特定技能外国人の受け入れ状況が伸び悩む理由の一つと考えられます。
参照:出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会字具現に向けた取組」
日本政府が発表していた分野別受け入れ人数目標から読み解けること
特定技能制度が施行されたと同時に日本政府はこの制度での今後の受け入れ見込数も公表しておりました。公表データをもとに新型コロナウイルス沈静化後の予想や現状分析をして行きます。
出典:出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会字具現に向けた取組」
5年間の受け入れ見込数より読み解く新型コロナウイルス沈静化後の予想
受け入れ見込数については人数の多い分野から介護分野(60,000名)、外食業(53,000名)、建設分野(40,000名)となっております。
特定技能が創設された目的は日本の深刻化する人手不足を外国人の受け入れで補うということを考えると、多く人数設定されている分野ほど、人手不足が深刻な分野であると考えることができます。
介護分野での受け入れ見込数から分かること
介護分野では日本の少子高齢化と長寿の国であることが合わさって、高齢者の介護をするための人材不足が深刻な状況となっております。
技能実習生や特定技能外国人の母国では日本に点在している介護施設が少なく、家族が介護をするのが一般的です。
文化的な理由などもありますが、日本も昔は同じ状況であったことを考えると、やはり、多くの技能実習生や特定技能外国人の母国である発展途上国では高齢者が少なく、若年層が多い国が多いため、介護施設が少ないのだと考えられます。
すでに家族や自国の労働力だけでは介護分野の人手不足を解消できなくなった日本ではこの分野を特定技能での最重要分野としていることからも深刻さを知ることができます。
また、介護分野では特定技能の在留資格以外にも、ベトナム国籍・インドネシア国籍・フィリピン国籍の外国人が申請して介護施設で就労できるEPAの制度や介護という在留資格に加えて、技能実習制度でも介護の職種があるなど以前から、人手不足解消のための施策はありましがた、それでも足りていないということが特定技能のデータより知ることができます。
外食分野での受け入れ見込数から分かること
コロナウイルスの影響により、多くの外食産業が打撃を受けていることもあり、一旦は人手不足の度合いは小さくなっています。外食分野の日本人従業員ですら失業しているケースも多いため、この分野で受け入れをしたいという企業も大きく減っているため、しばらくは受け入れ人数も伸び悩むことが予想されます。
しかし、長期的な視点で見ると、いずれは新型コロナウイルスが沈静化して、経済活動も正常化すれば、外食分野でも再度、人手不足となると考えられるため、いずれは多くの特定技能外国人が雇用される分野と言えます。
建設分野での受け入れ見込数から分かること
建設分野については肉体労働であり、きつい仕事であるため、日本人を募集しても人材を採用するのが難しい分野です。
また、介護分野と同様に技能実習制度でも建設職種があるなど、人手不足の深刻度が分かります。
海外でも、例えばマレーシアの例では建設分野で就労しているのはほとんどが外国人で、自国よりも経済力の低い国からの労働者を建設分野で雇用している場合が多いです。
日本でも今後は、日本人が集まりにくい建設分野では特定技能外国人を含めた外国人労働者に大きく依存して行くことが予想されます。
これらのデータからも特定技能制度にて多くの人数目標が設定されている分野は日本の若者には嫌煙され、きつい仕事である場合が多いです。
入国が再開された後には海外で待機をしている技能実習生や特定技能外国人を中心とする多くの外国人がこれら分野へ就労をするために来ることになります。
直近の在留特定技能外国人数データより分かること
出入国在留管理庁が公表している在留特定技能外国人の人数データを見ると、今まで気づくことができなかった多くの発見があります。
また、データを分析することで今後の予想をすることもできるため、3つのカテゴリーに分けて在留特定技能外国人の人数データを読み解いて行きます。
分野別の受け入れ状況より分かること
すでに紹介をしたように最新(2021年3月末時点)の在留している特定技能外国人の人数は22,567名で分野別では人数上位順で飲食料品製造業分野が8,104名(35.9%)、製造業3分野が4,600名(23.6%)、農業分野が3,359名(14.9%)となっています。
このデータから読み解くことのできることは、まず、飲食料品製造業分野で特定技能外国人の受け入れが進んでいるのは、この分野の受け入れ企業は新型コロナウイルスの影響を受け難く、飲食料品に対する消費は減らないため、受け入れ人数も安定して伸びているのと、協議会の加入手続きやルールが他の分野と比べると簡単であることなどが考えられます。
また、製造業3分野については協議会加入手続きが難しいなど一定のハードルがありますが、依然として外国人労働者に対する需要が高い分野であり、多くの受け入れ人数となっているようです。
農業分野については、繁忙期には人手が必要で、技能実習生に頼っている企業も多い中、新型コロナウイルスの影響であてにしていた技能実習生が入国しないため、国内にて、技能実習を修了した外国人などを積極的に特定技能の在留資格を使って雇用している場合があり、特に農業分野は他の分野と比べても専門性が低い分野であることも追い風となっているようです。
すでに紹介をしたように最新(2021年3月末時点)の在留している特定技能外国人の人数は22,567名で分野別では人数上位順で飲食料品製造業分野が8,104名(35.9%)、製造業3分野が4,600名(23.6%)、農業分野が3,359名(14.9%)となっています。
このデータから読み解くことのできることは、まず、飲食料品製造業分野で特定技能外国人の受け入れが進んでいるのは、この分野の受け入れ企業は新型コロナウイルスの影響を受け難く、飲食料品に対する消費は減らないため、受け入れ人数も安定して伸びているのと、協議会の加入手続きやルールが他の分野と比べると簡単であることなどが考えられます。
また、製造業3分野については協議会加入手続きが難しいなど一定のハードルがありますが、依然として外国人労働者に対する需要が高い分野であり、多くの受け入れ人数となっているようです。
農業分野については、繁忙期には人手が必要で、技能実習生に頼っている企業も多い中、新型コロナウイルスの影響であてにしていた技能実習生が入国しないため、国内にて、技能実習を修了した外国人などを積極的に特定技能の在留資格を使って雇用している場合があり、特に農業分野は他の分野と比べても専門性が低い分野であることも追い風となっているようです。
国籍別の受け入れ状況から分かること
特定技能外国人の国籍を見てみると、ベトナム国籍が14,147名(62.7%)を占めており、次に中国国籍が2,050名(9.1%)、インドネシア国籍が1,921名(8.5%)と続いています。
国籍別のデータより読み取れることは、特定技能制度では技能実習2号以上を修了した外国人については、特定技能外国人となるための要件(技能評価試験の合格や日本語能力検定4級以上の合格など)が免除されるため、ほとんどが技能実習から特定技能へと在留資格を変更している場合が多いということです。
それを証明するように日本にいる技能実習生の数も人数が多い国籍からベトナム、中国、インドネシアとなっています。
地域別の受け入れ状況から分かること
地域別では上位から愛知県が2,027名、千葉県が1,661名、東京都が1,417名となっております。
地域別データを詳しく読み解くと、愛知県では製造業3分野での受け入れ人数が他の地域と比べて多いのが特徴です。これは、愛知県はトヨタ自動車を筆頭に製造業が多く、多くの製造業の企業で技能実習生や特定技能外国人を雇用する需要があるためです。また、愛知県内の多くの製造業では新型コロナウイルス影響を受けながらも生産量が回復している場合も多く、このデータの結果につながっていると思われます。
千葉県と東京都に関しては、建設分野の受け入れ人数が多いことが特徴で、これはオリンピックを中心とした建設需要があったのだと推測されます。
また、その他の地域のデータを見てみると、北海道では農業分野だけが多くの受け入れ人数となっており、広島県や愛媛県では造船・舶用工業分野での受け入れ人数が他の地域と比べて多くなっています。
地域別のデータを読み解くと、特定技能の受け入れ人数はその地域の産業の特色を反映していることも分かります。
まとめ
今回は特定技能制度について、日本政府が公表している資料やデータをもとに今後の予想などを紹介しました。
特定技能制度の趣旨は日本の深刻化する人手不足を外国人の受け入れで補うということを考えると今後もすでに目標人数が公表されているように、多くの特定技能外国人が雇用されて行くと考えられます。
そんな中でも日本政府は同時に、特定技能14分野の今後の人手不足状況を継続的に把握し、且つ、受け入れ方針などについて協議をし、在留資格認定証明書の交付の停止や分野の削除の可能性があることも公表しています。
今回の新型コロナウイルスのような事態があると、外食分野の現状のように、人手不足の状況についても変化し、特定技能外国人の受け入れ人数制限のような措置が取られる可能性があることも忘れてはいけません。今後も、頻繁に更新される特定技能制度に関する情報について確認をしながら受け入れを進めていく必要があります。