特定技能とは?技能実習との違いや今後の傾向を解説!
外国人が日本で就労するための在留資格に、「技能実習」や「特定技能」があります。
この記事では特にこれら2つの制度をピックアップし、各在留資格の概要や違い、技能実習を特定技能へ切り替えるための要件についてご説明します。
技能実習から特定技能に切り替えを行う際のメリットやデメリットも合わせてご紹介します。外国人の受け入れを予定している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
技能実習生の受け入れ規制が緩和に
政府はこれまで、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、外国人の入国を厳しく制限してきました。
しかし2022年2月には、ビジネス関係者や留学生の入国規制を緩和するとの発表がありました。
この対応から想定される今後の動きを含め、この発表について簡単に解説します。
コロナ禍で規制されていた技能実習生の入国
新型コロナウイルスが流行する以前には、数多くの技能実習生が日本に入国していました。
技能実習生は人手不足の業界を支える存在として大きな役割を果たし、今後のさらなる受け入れ拡大にも期待が高まっていました。
しかしそんな矢先、世界的に新型コロナウイルスが流行してしまったため、「新規入国原則停止」として外国人の入国に厳しい制限をかけざるを得なくなってしまいました。
それを境に、技能実習生や特定技能を持った外国人の入国は、実質ほとんどできなくなりました。
入国者数を1日5000人に緩和
技能実習生や特定技能外国人の受け入れがほとんどストップしてしまった状況ですが、2022年2月に政府は感染状況や経済の動向を加味し、入国者数の制限を緩和することを発表しました。
具体的には1日あたりの3500人までとしていた新規入国者数の上限を、一日あたり5000人まで引き上げています。
入国者や帰国者に求めている待機の期間も、ワクチンの3回目接種を条件に現在の7日間から短縮する方針だといいます。
この対応から今後想定されること
この対応によって、外国人労働者の雇用や実習生受け入れに関してはどのような影響が出るのでしょうか。
簡潔に言えば、日本で働きたいと思っている外国人がより多く流入してくると考えられます。
特に特定技能の中には在留期間が無期限になるものもあります。
在留資格の取得を目的として技能実習を行うケースや、特定技能の習得者が増えると見込まれます。
「技能実習」「特定技能」とは?
ここまでで既に登場している「技能実習」や「特定技能」というワードですが、それぞれについてもう少し深掘りして説明をさせていただきます。
どちらも日本で働くための在留資格ですが、各制度には特徴があります。
まずは制度について正しく理解し、どのように動くべきか確認しましょう。
外国人雇用の要となる2つの制度
先ほど述べたように、技能実習も特定技能も在留資格の制度を指します。
どちらの制度も、今後外国人の雇用を進めていくのであれば決して避けては通れない、非常に重要な制度です。
一般的にはまず技能実習生を受け入れてから、特定技能へ切り替えるという流れで受け入れを行います。
特定技能への切り替えについては後ほど詳しくご説明します。
技能実習制度とは
技能実習制度は、受け入れ先での実務を通して技能実習生にスキルを身につけてもらう制度です。
技能実習制度を活用することで、最大5年もの在留が可能になります。
実習先の変更(転職)や家族の帯同ができないなど、特定技能よりも制約が多くなっているのが特徴です。
特定技能制度とは
特定技能制度とは、日本国内で現在深刻化している人手不足を解消するため、外国人を受け入れる制度です。
「建設」「外食」など14の分野において、それぞれ特定技能の認定が行われており、試験の結果や実習経験などで認定の可否が決まります。
受け入れ対象となっているのは、ベトナムやインドネシアなどの東南アジアの国々です。
条件次第では無期限で日本に在留できるようになります。
技能実習と特定技能の違い
ここからは技能実習と特定技能の具体的な違いについてご説明します。
この2つの制度は似ているように思えますが、そもそも制度が作られた目的から大きく異なります。
ぜひこの機会に2つの制度について整理してみてください。
受け入れの目的
技能実習制度は「開発途上国の人材育成」を目的としており、国際的な貢献活動の一環として施行されています。
それに対し、特定技能制度を実施する目的は「日本における人手不足の解消」です。
そうした違いが在留資格の認定条件や家族帯同の可否など、さまざまな部分に表れています。
試験実施の有無
技能実習生の受け入れにあたっての試験実施はありませんが、特定技能認定の際には試験に合格する必要があります。
ただ、技能実習を問題なく修了することができれば、特定技能への切り替え時に試験が免除される制度もあります。
また、技能実習1号から技能実習2号(特定技能認定に必要な在留資格)に移行する際には、実習修了時に試験で一定レベルの結果を残さなければなりません。
試験の内容は実務に基づくもので、出題はすべて日本語で行われます。
技能実習だからといって勉強しなくていいとは言えないでしょう。
転職の可否
技能実習生はあくまで「実習」として実務経験を積むことになるため、原則転職はできません。
一方、特定技能制度を使った場合は「就労」しているという扱いであるため、転職が可能です。
この転職可否の部分は、2制度間の違いの中でもかなり大きい部分だといえます。
今後特定技能2号の対象となる分野が拡大する?
2021年11月に特定技能2号の分野が拡大され、13もの分野で無期限就労が可能になりました。
この「特定技能2号」とはどのようなものなのか、またどの分野が対象なのかを順に説明していきます。
特定技能2号とは
特定技能には「1号」「2号」の2種類の在留資格が設定されています。
簡潔にまとめると、特定技能1号から更に高い水準の能力を身につけた外国人が取得できるのが、特定技能2号です。
特定技能2号を取得することで、1号では5年だった在留期間が無制限になったり、家族の帯同が可能になったりします。
現在の対象業種
2021年に大幅拡大された特定技能2号の分野ですが、現時点で対応している13の領域は以下の通りです。
・ビルクリーニング
・素形材産
・産業機械製造
・電気・電子情報関連産業
・建設
・造船・舶用
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造
・外食
特定技能1号として認められている14の分野のうち、「介護」のみが特定技能2号に対応していません。
介護分野においては、実務経験に基づいて介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができ、合格すると在留資格「介護」の取得が可能です。在留資格「介護」では、在留期間が無制限になったり、家族の帯同が可能になったりします。
対象分野拡大による影響は?
分野の拡大に伴って予想されるのは、より幅広い分野での特定技能1号取得者の増加です。
特定技能2号を取得するためには、特定技能1号を取得して経験を積むことが近道です(必ずしも特定技能1号の取得をしなければならないわけではありません)。
そのため、「まずは特定技能1号を」と考える人が増えると予想されます。
特定技能に切り替えを行う際のメリット・デメリット
一般的には、特定技能を取得すると技能実習生時代よりも働きやすくなると言われています。
そのため多くの技能実習生や受け入れ企業は特定技能への切り替えを目指しますが、切り替えることでメリットが生じる反面、デメリットもあります。
ここでは主に受け入れ企業目線でのメリット・デメリットをご紹介します。
切り替えで得られるメリット
受け入れ企業側の最大のメリットは、外国人労働者を即戦力として現場に投入できることです。試験を受験して特定技能を取得した場合でも、技能実習から切り替えを行った場合でも、既に実務で必要な能力を身につけていると判断して間違いないでしょう。
そのため、技能実習生と比較すると研修に人的・金銭的コストをかける必要がないことが多いといえます。
特に人手不足にあえいでいる現場では、特定技能を取得した外国人は救世主になるでしょう。
切り替えに伴うデメリット
特定技能切り替えに伴って受け入れ企業側に生じるデメリットには、「転職ができるようになる」ことと「雇用コストが上がる」が挙げられます。
技能実習生はあくまで実習先として受け入れ企業での実務経験を積むため、原則転職することはできません。しかし、特定技能を持つと自由に転職できるようになります。
また、給与水準については「日本人と同等以上」とすることが義務づけられているため、多くの場合では技能実習生の頃よりも給与が上がる傾向にあります。
離職リスクや雇用コストが高くなるという意味では、こうした事柄はデメリットとなるでしょう。
技能実習を特定技能に切り替えるための要件
さて、技能実習からの切り替えで特定技能を取得する場合の要件についてご説明します。
もし現在受け入れている技能実習生にこのまま働いて欲しいのであれば、特定技能への切り替えという手段もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
対象となる分野
技能実習から特定技能へ切り替えができるのは、特定技能が設定されている下記14分野です。特定技能1号については介護分野も対象となっているため、技能実習から切り替えができます。
・介護
・ビルクリーニング
・素形材産
・産業機械製造
・電気・電子情報関連産業
・建設
・造船・舶用
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造
・外食
切り替えの要件
特定技能への切り替えを行う際に押さえておくべき要件は、主に2つです。
それは「技能実習時と同一の分野・業種で申請しているか」「技能実習2号を良好に修了しているか」です。
これらをはじめとした各種要件を満たすことで、試験免除で特定技能での在留資格を取得できます。
受け入れ企業の注意点
受け入れ企業側では、「過去や現在の手続きに問題はないか」「技能実習時と同一の職種で申請できているか」「給与水準において基準を満たしているか」などに気を配らなければなりません。
誤った申請や虚偽の報告をしてしまうと、最悪入管法違反などの罪に問われてしまうこともあります。
切り替え申請の際には慎重に確認を行いましょう。
このチャンスを活かして特定技能人材の確保を進めましょう!
入国規制の緩和や特定技能2号の対象分野拡大により、今後さらに就労目的での入国者が増えることが予想されます。
その一方で各業界の人手不足は今後も続くと見込まれているため、優秀な人材の争奪戦が起こる可能性もあります。
できるだけ早めに手を打ち、今後の状況にいち早く対応できるようにしておきましょう。
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