人材確保戦略としての「特定技能」活用法(1)―介護―
人材確保戦略としての「特定技能」活用法(1)―介護―
2019年からスタートした在留資格「特定技能」ですが、人材確保に苦しむ業界・企業はもちろん人材紹介業界などから熱い視線が送られています。ただし、制度スタートから半年経過した現在でも、具体的な動きはまだはっきり見えてきていないのも事実です。
「特定技能」は人材確保に悩む企業にとってメシアとなりうるのか?
熱い波に乗り遅れず、優秀な外国人材を確保したい企業のために、制度のしくみや利用方法、最新の情報をお届けしたいと思います。
第1回は「特定技能」介護についてです。(介護には他にも在留資格が複数存在するため、ここでは「特定技能」介護と表示します)介護業界の人手不足は深刻といわれ続けています。日本で最も人材難に喘ぐ業界の一つと言えるかもしれません。ある調査では、2025年には需給ギャップは37万人を超えるとの推計もあります。政府も①EPA②独立した在留資格としての「介護」③技能実習等によって外国人介護人材の受け入れを図ってきました。しかし、それぞれに問題点が多く、結果から言えば③技能実習は結果はまだこれからですが、その他については成功しているとは言い難い状態です(①②の制度あわせて来日外国人は1000人にも満たない)。
(福島県庁-介護説明会資料より)
介護業界からは、人事コストを問題視する声をよく聞きます。特にEPAなどでは、トータルで日本人1.5人分の経費がかかるなどといった話もあるようです。政府もこの点については、補助金等の政策を準備し、後押しを図ろうとしています。「特定技能」介護は既存3つの制度の問題点をある程度克服できる制度設計となっており、今後の展開次第では、この業界にとって貴重な戦力となりうる可能性も秘めています。
では、次に「特定技能」介護の在留資格をとるための要件です。まず、技能実習生からの転換です。実は、介護の技能実習生は2018年から始まったばかりです。技能実習から特定技能へ転換するためには、3年間の実習を修了しなければならないため、早くとも実現は2年先ということになりますが、ゆくゆくは主要な人材供給元になるかもしれません。
次に海外試験に合格して来日する、もしくは日本で試験を受ける方法についてです。「特定技能」介護では、技能試験と2つの日本語試験に合格する必要があります。介護は、現実に試験が実施されている数少ない分野ですが、これまでは、フィリピン中心で、すべて海外で行われてきました。ただし、半年を経過し、対象国も増え、国内でも順次試験が実施されます。
試験実施予定
(厚労省HPより)
政府は、「特定技能」介護の受入れを今後5年間で60,000人を予定しています。試験は以前から実施されているものも含め合格者は相当数存在すると考えられます。この分野に関しては、今すぐにでも、必要な人材を求めることは可能になりそうです。
執筆者紹介
小栗 利治(おぐり としはる)
行政書士すばる法務事務所 代表
2009年脱サラし、行政書士事務所を開業。現在は、主に福祉事業の運営サポートや外国人在留資格業務を手掛ける。日本人・日本企業と外国人労働者が、共生できる関係を築けるよう、両者をサポートする業務に注力している。(行政書士 宅地建物取引士 1級FP技能士)
行政書士すばる法務事務所